■2007年4月の「絵てがみコラム」
 

新橋演舞場やその近くの歌舞伎座、浜町の明治座など普通の音楽ホールと違って古典芸能や伝統演劇を見せる劇場は桟敷席があったり、提灯がたくさん下がっていたり客席の後方と舞台をつなぐ花道があったり特別華やいだ雰囲気を持っている。
その新橋演舞場で沢田研二・藤山直美主演の松竹新喜劇「桂 春団治」を観た。平日の昼間なのに客席は3階まで一杯。チケットもなかなかのお値段で2人で御膳を予約してパンフレットなどを買ったら30000円くらいになる。
でも観光バスで遠くから団体で観に来ていたり。長時間にわたるお芝居の幕間にお弁当を食べたり、甘味を食べたり、男性客が間あい良く掛け声をかけたりして。
最初はちょっと戸惑ったが数回このような観劇を経験していくうちに、贅沢だけどたまにはいいもんだな〜と思えてくる。和服姿のおばさまたちもニコニコしているし、おしゃれした老夫婦も素敵だ。おばあちゃんがお嫁さんかお孫さんに手を引いてもらって観劇土産を眺めていたり。その光景はなんとなくゆったりした時間が流れていてシアワセな感じなのだ。
芝居も絶妙な大阪喜劇の泣き笑い。花道がとても効果的に使われていて場面転換や出会いや別れ、臨場感一杯で観客との気持ちの距離をぐっと近づける。華のある、憎みきれないろくでなし春団治にも魅了され、人力車で花道を去るシーンではあちこちですすり泣きが聞こえた。
余韻に浸りながら演舞場からでてくると新橋の高級料亭の横を人力車が通り過ぎた。


 
 
 

ドーナッツがちょっとしたブームらしい。アメリカから人気のドーナッツSHOPが新宿に日本初上陸。いつ行っても長蛇の列。「ただ今の待ち時間1時間30分」なんてディズニーランドのアトラクションのような看板が立っている。そんなに美味しいのかな〜と、とても気になるけど、いまだに口にしていない。情報通の友人Yさんによるとおなじみのドーナッツ店もグレードアップした一個250円くらいのドーナッツを販売するカフェをオープンさせるらしい。
ドーナッツはケーキやシュークリームに比べてワンランクカジュアルな菓子パンに近い素朴なおやつってイメージなんだけどな〜。揚げパンっぽくて懐かしいのかも…。
揚げパン知ってますか?小学校の給食で時々コッペパンを揚げて粉砂糖をまぶしただけの揚げパンが出た。大好きだったな〜!クラブ活動をして夕方給食室の前を通ると給食のおばさんの親切でその日残ったパンやりんごが自由に持って行って良いように置いてあった。おなかペコペコの生徒には素晴らしいプレゼントで揚げパンの残っていた日には奪い合うようにちぎって食べた。
素朴なドーナッツを食べるとそんな事を思い出す。

 

 
 
 

NHKの番組で中国の旧正月・春節に向けて一斉に故郷に帰る人々で混雑する上海の巨大バスターミナルの様子を伝えていた。
地方から家族を置いて出稼ぎに来ている人々が年に一度、たくさんのお土産と一緒にバスに積み込まれて故郷に急ぐ。一方、なかなかバスに乗れない人もいる。バスの切符の買い方も解らず途方に暮れる視力の弱い老女。パソコン一台を土産に故郷で起業するという若者。仕事が遅れてバスに乗り遅れた人。10時間も20時間もかけて故郷へと向うバスの後姿に様々な人間模様が感じられた。
私は10年程前に一度上海を訪れた事がある。思えばこの10年の上海の変化はすさまじいものがあるだろう。黄浦江沿いから眺めた印象的なテレビ塔のある浦東エリアは当時写した写真とは歴然と高層ビルの数が違っている。駅や交通機関のシステムもアルバムの記念写真とは全然ちがう。列車の指定席も手書きの切符だったのに…ホテルの裏の庶民的な古い町並みも、おそらく綺麗なビルに姿を変えているだろう。
その番組の中でも言っていた。出稼ぎで上海で働く大勢の新上海人によって今の上海は支えられていると。バス会社の社員もその人たちが年に一度故郷に帰るそのときくらい、目一杯助けになってあげなくてはと必死でバスの増発を手配していた。
上海はいいことも悪い事もある。豊かな人も貧しい人もたくさん…と淋しい目をして話していたその乗客は一年分働いた収入を盗まれたという。バス代だけ社長にもらって無一文で故郷に帰るという。その話を横で聞いていた若者がそっと飲み物を差し出していたのが印象的だった。きっとすごく変ったものと変らないものもたくさん有るに違いない。

 

 
 
 

実は結構盆栽好きである。土から盛り上がって露出している根が造形的な「根上がり」とか、石に樹を植え付けた深山幽谷(しんざんゆうこく)の風景を表現した「石付き」…なんて本格的なことはほとんど解らないし、自分で最初から創ったりはしないのだが、何故かいつの間にか盆栽の本が数冊…公民館や神社の境内で○○盆栽展なんて書いてあると思わず足を止めてしまう。
家の近所にも洒落たミニ盆栽の店が出来てその店の前を通るのを楽しみにしている。小さな季節感を感じるからだ。覗き込むと小さな森のような小宇宙のような独特な世界が広がる。
でも育てるのはとても難しい。苔ももう何度もダメにした。本来屋外で一年を通してじっくり育てるもので、丁度いい葉の色が綺麗なとき、もうすぐつぼみが開きそうなときに買ってきて部屋に飾って愛でるだけでは盆栽好きなんて言ってはいけないのかも知れない。
床の間と掛け軸との相性、鉢とのバランス(盆栽の盆は鉢のこと、栽は樹のことなのだ!)などすご〜〜〜く奥深いものなので簡単に手を出せるものではない。
市ヶ谷に盆栽美術館と言うのがあるらしい一度行きたいと思いながら、やっぱり松かな〜?紅葉の季節の方がいいかな〜?なんて思っているうちに行きそびれている。もちろん植物は自然なほうがいいけど大事に愛されて美しく年を重ねた樹を見るのもいい。

 

 
 
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