■2009年6月の「絵てがみコラム」
 

一足早い暑気払いとばかり、女友だちとピザを食べ美味しいモッチェレッラチーズをつまみ、それぞれ違う飲み物を注文して大いに喋った。大いに笑った。こんなに価値観の違う3人も珍しい。アート系の同じ人種?だと思っていたのに「買い物」に関する価値観の違いに大爆笑だ。
Oさんはいつもおしゃれで高級なブランド品を身につけている。同じブランド一辺倒ではなく自分に似合った、このブランドのこれ!と言うものを即決して気に入ったらシリーズで買い揃えてしまうというのだ。定収入が無いYさんと私にはそれらの買い物の価格は桁違いで同じようなものをシリーズで買ってしまうというのもチョッと信じがたいのだ。かっちりした革のポーチ、ペンケース、手帳、名刺入れ、ブックカバー、書類ケース…彼女のバックはいつも鉛のように重い。腕が痛い、肩が痛いと嘆いている。
Yさんはすごく慎重派で、いいな…と思うものを見つけてもよ〜く考えて値段や評判も調べて納得したら翌日買いに来る。そのときなくなっていたら縁が無かったとおもってあきらめる。でも買うのは黒い服ばかり…。そんなに悩まなくてもと思ってしまう。
私はその中間かもしれないが、分割払いが嫌いで太ってどんどんキツクなっていく服にお金を払いつづけなくてはいけないなんて許せない。(痩せれば良いのだが…)買うことに満足してしまって洋服箪笥にはタグのついたままの服が何枚か下がっている。一番勿体無いのは誰かしら?
先日Oさんが持っていたビニールのトートバックを見て「ちょっと渋いエコバックね」と言ってしまった。実は最近流行のフランスのブランド物で10万円以上するカジュアルバックだと言う。何処がカジュアルなんだ!「うっそ〜!信じられない!」友だち甲斐の無い事を正直に言ってしまった。その後電車の中などで時々そのバックを持った人を見かける。お金持ちなんだな〜とやっぱりそう言う目で見てしまう自分が悲しい。私は高級な腕時計を欲しいと思わない。高い時計をしていてもゆっくり時間が流れるわけではないのだから、まして高級なのに文字盤が見辛いなんて許しがたい。
私とYさんが大事なデザイン原稿をお店の紙袋に入れてやり取りしている様子をみてOさんは「エコバック持ってないの〜?わたしなんかエコバック一杯持ってるわよ!」ってそれはエコ?
「洋服と一緒に2300円もするソックスを買っちゃった。しかも色違いも」
「え〜!そんな高いソックスはくの〜?」
「はかないわよ〜勿体無い」
「???はかないのに買ったの?しかも色違いも?」
「コレクッションよ。置いておくの!」
「え〜どんなソックス?」
「普通の黒とグレー」
「え〜?普通のソックス?2300円もするのに〜」
価値観の違いにもう涙が出る程笑った。互いに理解しがたいけどいい友だちだ。

 

 
 
 

コールラビという野菜をご存知だろうか?実はプラハの市場で今が旬とばかりに山積みになっていた宇宙人?のような野菜、何者かずっと気になっていた。握りこぶしくらいの球状でツノのような茎?枝?が生えている。正しくは葉は切り取られて葉の付け根の部分だけが取り残されていて、そのにょきにょきっぽさが宇宙人の触角?のように見えるのだ。
で、珍しがって写真をとってきていたのだが先日近所の高級スーパーでその宇宙人を見つけた!それはプラハで見かけたのと同じ緑のものと紫のものも。「コールラビ・茨城産」と表記されていた。向こうでは一個10チェココルナ約55円だったけど日本では398円…悩んだけどどうしても描きたくなって買ってしまった。
しみじみ眺めてもやっぱり不思議な野菜。野菜ソムリエの資格を持つ親切な友人が野菜辞典のコピーを送ってくれた。それによると、やっぱり原産地はヨーロッパでキャベツの変種、蕪のように見えるけど地上にできる肥大茎で蕪の3倍も4倍もビタミンCを含んでいるらしい。コールがキャベツのことでラビはカブのこと。なるほど…皮を剥いて薄切りにしてサラダにしたり、バターソテーやシチューに入れても美味しいらしい。(高級モデルさんなのでまだ食べていない)
別の資料には紫色のものを「ウイーンの紫」とも呼ぶ、と書いてあった。え?じゃあ緑のは?「プラハの緑」でいいか〜。

 

 
 
 

不景気なさなか、幸せな事になんだか毎日忙しい。コンサートの予定もランチの誘いも断らずに全部欲張りに実行しようと言うのだから忙しいのも無理はない。いつも夏が一番落ち着かないんだけど今年は主人の新盆でもあるし、静かに過ごそう…と思っていたのにそうはならなそうだ。
実は4月の末に是非に!とミニ個展の企画のお話しをいただいた。グループ展ならともかく7月の初めの個展なんて、あまりにも時間がない!!とお断りしようと思ったのだが、こんな時代「是非に!」と声をかけていただける幸せ。
「やっぱり、やるべきだよね〜引き出物用に依頼されている40本の手描き扇子まだ半分残ってるし、定番のイラストの仕事に加えてもう年賀状の仕事も始まってる。グループ展やイベントの仕事も…全部大事。できるかな〜でも…やるべきだよね〜」とお仏壇や家中の蛙たちに相談して?引き受けてしまいました〜。「すでにある作品でもいいですよ」と言われてもやっぱり新しい気分で殆ど書き下ろし、新しい額縁も用意してしまう。新しい扇子も仕立ててしまう。
でも忙しい時に限っていろんな事が起こるもので、マンションの配管工事!我が家の部屋の下の下で水漏れ発見!サ〜原因はどこだ!各階の2号室のお風呂場の壁をぶち抜いて健康診断!騒音とほこりとそれが終わったらタイル張り。連日朝9時からの作業開始にパジャマ姿で応対するわけにもいかず、夜中の2時3時まで仕事をしている私には残酷な早起き〜。
それに玄関に飾ってある蛙たちが工事のほこりで美しい緑色が損なわれているのが気になってしょうがない。蛙君たちのシーズンだと言うのに。あ〜洗ってあげたいな〜しかし100個はあろうかと…小さな多肉植物の寄せ植えが窮屈そうで植え替えてあげたいな〜と気になってしょうがない。
ああそれは工事が完全に終わって、仕事の区切りをつけてすこし時間が出来てからにしなさ〜い!と毎日ココロの葛藤です。

■呉服の「ころもや」夏の小物展
 6月20日〜7月5日 西荻窪店
 7月7日〜18日 人形町店
 *扇子やポストカードを扱っていただきます。

■7月2日〜12日(8日休廊)「水辺のいきものたち」
  千葉市スペースガレリア企画グループ展

■7月4日〜13日「村西恵津個展・小夏日和」
  銀座伊東屋本店8階ミニギャラリー
 *水彩画の小作品やチェコの旅スケッチなど展示予定です。
  詳しくは追ってお知らせいたします。

 

 
 
 

さて、私たちにはもうひとつ任務が。雑貨屋さんを経営している友人に雑貨の買い付けを頼まれたのだ。買い付けと言っても大量の商品を仕入れてくる…と言うのではなく、「感性のアンテナを張ってひっかかったものをピックアップせよ!」参考までに彼女から預かった雑貨の本には独特な「かわゆし!」の付箋がたくさん貼られていた。西荻窪の彼女のお店はシンプルで素朴な中にもこだわり感あふれた素敵なお店で、最近特に北欧や東欧のデッドストックものがおしゃれだと思う!と話していたのだ。
そんな彼女のおメガネに適う「かわゆし!」を求めて、買い物魂にも拍車がかかり市場を覗くのもアンティークショップを覗くのもますます楽しくなる。 お土産を探すことも(異国の蛙を連れ帰るのも kkw参照)大事な旅の楽しみで大好きな事。負担に思うことなく「このかわゆしはどう?」「かわゆ過ぎ〜!却下!」などと話しながら。
そんな私たちの掘り出し物は古本屋さんで見つけた昔のお菓子のラベルやチーズのラベル、マッチ箱のラベルのちょっとチープな「紙もの」だ。何処の国にもいつの時代にもこんなものを大事に集めていた人がいるんだな〜と、嬉しくなりながら薄暗い店にしゃがみこんで物色。
チェスキー・クルムロフの文房具屋さんで見つけた鉛筆のボディーの色もなかなか微妙な「かわゆし加減」だと思う。まったく読めないチェコ語もいい感じだし。ハンディキャッパーの制作した小さな陶の動物も「かわゆし!」。
任務を遂行していた私たちは遅めのランチを人気のバラチンキを出すカフェに入った。バラチンキとはクレープとパンケーキの間のような焼いた生地の上に野菜やハム・チーズ等を乗せた食事系のものとフルーツや生クリーム、アイスクリーム等を乗せたデザート系のバラチンキ両方ある。勿論私たちは両方頼んで分けて味わう。ボリューム満点ですごく美味しい!大満足でお勘定を頼んだ時、伝票と一緒に銀の小さなトレイに小ぶりの青リンゴひとつ!
「きゃ〜〜!かわゆし〜〜!」
特筆すべき「かわゆし」だった。

■西荻窪「Lloupe」4周年記念「ルーペのくだもの展」
 6月 6日(土)〜13日(土)11:00〜18:30 ※6/9(火)は休み
 http://www.a-loupe.com

 *チェコで買ってきた雑貨の一部が展示販売される予定です。

 

 
 

私たちの今回のチェコ旅行には実はしっかりしたテーマタイトルが付いている。「キュビズム建築を堪能する旅」。建物ディティール好きの二人にとって(もともとインテリアの壁紙や床材、外壁材などをデザインする会社にいた二人なので趣味が一致していたのかもしれない)以前からチェコは特別思い入れのあるところで、これが第一目的だったのだ!
キュビズムとは20世紀初頭に起きたパブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックなどに代表される芸術運動で、色々な角度から見た不思議な顔や風景を立方体に描いて平面に納めるという美術表現。写真や工芸にもその影響は及んだ…と言われているのだが建築物に表現したのはチェコの若手建築家によるものだけでチェコにしか現存しないらしく、しかもそれは1910年〜第一次大戦が終わる1914年、ロンドキュビズムと呼ばれる戦後の1918年〜1925年までおよそ10年ほどの建築の実験的挑戦だったと言われている。
図面の上だけで「立方体感」を表現するのは、たやすい事かもしれないがそれが建築物になったら…現在の建築物だって立方体の箱を積み上げたようなもの…と高層マンションなどを見てしみじみ思うが、それとどのように違うと言うのか…なぜそれが世界唯一チェコだけに存在するのか…?写真展を見に行ったり大使館に地図をもらいに行ったり自分たちの興味を温めていたと言うわけなのだ。
チェスキー・クルムロフからプラハ市内に戻った私たちはSちゃんがしっかり下調べしてくれた路線図を頼りに地下鉄やトラム(路面電車)を乗り継いでそれら、キュビズム建築を堪能するために歩き回る事となった。なぜならそれらは市内に点在し集合住宅だったり、銀行だったり、事務所になっていたり、広場のたった一本の街灯柱だったり。その多くが特別な観光名所ではなく今現在も普通の暮らしの中で使われているものなのだ。
「トラムを降りて右側に線路、ガード下をくぐると住宅街…このあたりのはずなんだけど…」「あ〜〜〜〜!これだ〜〜〜!」大げさなほどの立体感を持った外壁が、ずっしりと遠方からの来客を迎えてくれた。プラハのあちこちで多く見かけた華やかなアールヌーボーやロココの装飾性とは対極のダイナミックなまるで広大な折り紙で風船を折ってぷ〜っと空気を入れたみたいな内側からの立体感で異彩を放っていた。 合理的な建築構造に殆ど関係のないような、何もこんなにカクカクしなくても…と思うような線や面が大胆な光と影を生み、それはモダンアートの様でさえあった。建物の前に車が止まっていても広告だらけの最新のトラムが通り過ぎても違和感なく100年近く前の姿でびくともしないで座っているように思えた。

 

 
 
 

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