■2021年4月の「絵てがみコラム」
 

風も爽やかでいろんな春の花が咲き乱れているというのに3度目の緊急事態宣言が発令される。はじめからゴールデンウィークんなんて言葉は完全に生活の中から消滅しているけど、都内に美術展を見に行くことさえ憚れる。何もかもが中途半端で国民性の自粛に頼った結果なのかな〜。先が見えない…。
先日東博で開催中の鳥獣戯画展を見た帰りに上野東照宮の牡丹園に立ち寄った。夏を思わせる日差しの中にとても鮮やかな牡丹の花が咲き誇っていた。手のひらよりもはるかに大きな赤や赤紫、薄紅色、白や黄色や黄緑の「まりも」という名の珍しい品種も。中でも少し紫がかった白のひときわ大きい「藤の島」という牡丹は豪華絢爛な中にちょっと妖艶な美しさが格別で「わ〜なんか高級な日本画みたい〜」と訳の分からない感想が口を突いて出た。それにしてもこんなに沢山満開に咲く牡丹を見たのは初めてかもしれない。手入れの行き届いた庭に所狭しと美しさを競っている。以前鎌倉で残雪の中で雪囲いをかぶった少しの寒牡丹を鑑賞して以来だ。
今年は春先の異常な温かさで桜をはじめいろんな花が早く咲いているという。これからは藤とかシャクナゲ、菖蒲も綺麗だね〜いろいろ見に行きたいけど…だめだね〜また引きこもりますか…。

 

 
 
 

そういえば初詣だわ。今年の正月はコロナ感染者数が都内で1000人を超えて初詣も自粛だった。そしてまたじわじわと…心晴れないまま。でも今週はいろんなことがあった。
久しぶりの友人との再会も空港のロビーで15分ほど。でも嬉しかった! 会えないことに慣れ過ぎて15分でも嬉しい。そして義姉が亡くなった。年の離れた亡き主人の姉だ。独り身でもう兄弟も誰もいない。ここ10年近く入院や手術や通院や老人ホーム探し、施設に入る諸手続き、成年後見人の申請や弁護士との相談…思えばどうして私が…と思うことが多かった。甥っ子の協力も得られないまま淋しい最期だったかもしれない。でも恵まれた施設で穏やかに苦しむことなく82年の幕を下ろした。コロナで面会もままならない毎日、私の出演した「趣味どきっ!」の放送を施設長がチェックしてくださっていて、施設のリビングのテレビで「ほら! 恵津さんがテレビ出てるよ〜!」って言いながらみんなで見たという。義姉が私を認識できたか疑問だが、家族の面会もままならない今、ちょっと珍しい私からの最後のプレゼントだと思いたい。
週明けカルチャースクールの新学期が始まった。思いがけない再会や新しい出会いがある。嬉しい時間を挟んで、その翌日には冷たい雨の中義姉を見送って小さな遺骨を菩提寺に預けた。淋しい気持ちはあるけれど、正直背負ってきたものから解放されて少しほっとした。出来ることは…やったよね。生と死を身近に感じる忙しい1週間だった。
翌日抜けるような青空、雨に洗われた青い紅葉が煌めいている。日本橋三井記念美術館で小村雪岱の展覧会を見て、好きな室町アタリを歩く。ビルの谷間に「福徳神社」がある。福徳の森と呼ばれる小さな塚に箱庭のように木々が植えられ新芽を蓄えた緑が光っている。そうだ初詣…してなかった。葬儀の翌日に初詣って不謹慎なんだろうか…でも明日を祈ろう! ひときは鈴を大きく鳴らしてみた。

 

 
 
 

懐かしい知人から「テレビ見ました! 鳥獣戯画好きの娘や友たちのために出張ワークショップやってもらえませんか?」このご時世、集っちゃって大丈夫なのかしら?と多少の心配はあったけど、春休み楽しい予定を立てられない子供たちのために母+小2年女児3組のワークショップをすることに。
Eテレの「趣味どきっ!」の時のように私がなぞった下書きをまずはなぞってみる。お母さんたちも「何だかうまい気がする!」と楽しそうだ。線の強弱や動物たちの表情を習得した後はオリジナルの絵巻に挑戦! 親も子もさっきまでのおしゃべりが嘘のように超集中! こうなったら子供たちの個性爆発だ! 山の向こうから覗く猫、ジャンプしすぎてさかさまになった蛙。相撲を取るのは極細のネズミ。力作が揃った。鳥獣戯画が持つパワーなんでしょうね〜笑顔が絶えないワークショップになった。
コロナ禍で何もかもが消極的になってしまっている昨今だけど、おうち時間で出来ること、その楽しみを見つけようと新しいスタートを切る4月。墨彩画の新しい平日ZOOMクラスには大阪やなんと!ハワイからの参加者も。オンラインならではだ。美術展も日時指定予約で静かにゆったり見れるようになって悪くない。去年の今頃の絵手紙コラムを見直してみるとスクールの休講を嘆いたりアマビエを描いたり…ピリピリしている。こんなに長く続くと思わなかった非常事態に、確かに慣れてしまったのかも。静かに恐れて、正しく慣れる、そんな暮らしが良いような気がする。
11日、日曜日の朝8:30〜8:55 Eテレの「趣味の園芸」番組内の花遊美というミニコーナーに出演いたします。水彩画でハーブを描きます。

 

 
 
 

私じゃないよ。私はこんなご馳走作れません! お料理のプロの友人がメンチカツ、塩糀の唐揚げ、チャプチェ、一口高野豆腐、おから、ほうれんそうのお浸し、春キャベツの浅漬け、海老と新玉ねぎのセビーチェ…そして主婦のプロが炊き上げた、たけのこご飯…それらを松花堂弁当のように盛り分けられて。文京の邸宅の大きな桜の木の下で静かにお花見ランチ。
春の花が咲き乱れる家主自慢の庭に椅子を離して点在させて…。久しぶりだよね〜なかなか会えずに、お喋りも出来ずに、ずっと会食も無く。「今年の桜が終わっちゃう…来ませんか?」そんなお誘いに二つ返事で参加。桜はもう花びらを失った花芯がちょっと寂しそうに頭をもたげて、風が吹くたびに残りの花びらが舞い落ちる。今年の桜も終わりだね。ほんのひと時だけど過ぎゆく春を楽しめた。会えるって幸せなことだよね〜しみじみ感じた一日。
足元には春の草花や大事にされているんだろうな〜と思える山吹の黄色い花や鮮やかな紫の十二単という小さな花のじゅうたん。それらをしばしスケッチもさせてもらった。植物の「今」は今しか描けない魅力がある。そんなことも感じられた楽しくて幸せな時間。
そうそう! 4月11日(日曜日の朝8:30〜)Eテレの「趣味の園芸」その番組内で描くのも、そんな植物の「今」を観察して。趣味どきっ!に引き続きですが日曜の朝、早起きしたら見てくださいね。放送時間など詳しくはWhat's Newをご覧ください。

 

 
 
 

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