■2010年1月の「絵てがみコラム」
 

2週続けて花の話題になるが、先日久しぶりに実家に帰ってみると寒さを避けてリビングに持ち込まれた「金の成る木」が満開の花を咲かせていた。もう大人2人でも持ち上げられないほど大きく根を張って年季の入った立派な「木」になっているが、縁起の良さそうな名前の割には、全く富をもたらしてくれる気配はない。新芽のところに5円玉を置いておくと肉厚な葉が育って5円玉が抜けなくなりまるでお金がなっている木に見えるところから、このような名前が付いたのだろうが、別名「黄金花月」という低木多肉植物で、よく見かける平凡な鉢植えだ。
でも花を見たことのある人は意外に少ないのでは? 普通秋ごろから1月、2月ごろにかけて小さな5弁の淡いピンクの花が塊で咲く。実家の大木は見事に満開で、葉っぱが見えないくらい、ふわふわと春霞のようだ。「わ〜見事だね!きれい!」と母に言っても、母はあまりこの花が好きではないよう…。9年前、初めてこの「金の成る木」が花を咲かせた頃、闘病中の父が最後の入院をして、その後、父は生きて家に帰ることはなかった。だから母にとっては、なんだか縁起の良くない花になってしまったのだ。毎年この花を見るたびにその頃の気持ちを思い出しているに違いない。
淡く優しく可憐な花なのに…私には健気に母を慰め見守ってくれているように思えるのだが。

 

 
 
 

大阪の出張から戻ると部屋中甘い香りが立ち込めていた。たった一日留守をしただけなのにヒヤシンスが満開になっていたのだ。一角獣のような緑の角からちょっとだけ白いつぼみが見えていただけなのに、にょきにょきにょきと茎が伸びて花がいくつも開いているではないですか!ブラインドも閉めて暖房もしてないのにすごいね。早春のパワーだね。一番の成長期を見逃したようで、ちょっと悔しいけどナチュラルなフレグランスに包まれた部屋でいい感じ!
…と思ったら。眠れない!香りが強すぎて、まるでデパートの化粧品売り場で寝ているような、くんくんくんくんと気になって目がさえてしまうのだ。夜中に起きだして玄関に持っていくことにした。靴箱の上にはカエルの陶器などと一緒にクリスマスの後すぐに買った千両の赤い実をつけた枝がまだ元気に花器に挿してある。その横に真っ白なヒヤシンス。ちょっと暗い玄関が紅白で明るくなった。ウィルカムフレグランス?としても良い感じだ。これで安心して眠れそうだ。明日また別の球根を買ってこようか…。

 

 
 
 

出かけた仕事先でポカッと時間が空いた。家に戻って出直すのも面倒だし久しぶりに映画でも見ることに。偶然その日は、月に一度のTOHOシネマデーということで1000円。ラッキー!お正月休みと連休の後の平日ということもあって人気のシネマコンプレックスもガラガラ。時間のちょうどよい「アバター(AVATAR)」を選択。年末から注目の3D画像の映画だがその映画館は残念ながら3Dではない通常の上映、だから空いていたのかな?そもそも戦闘シーンてんこ盛りのSF映画は苦手な分野だが、これはちょっとかなりびっくりした。
未来的衛星パンドラに住むナヴィという原始的かつ高度な身体能力を持った尻尾のある青い巨人に営利目的に侵略しようと企む軍隊…に力を貸す研究者とその研究の結果作り出されたナヴィと人間のDNAの結合体のアバターと呼ばれる分身によって侵略に加担する主人公の…とあらすじを書いても何のことやら???ですよね?つまりは超未来的異世界の生き物の共存と戦いのすごい映像表現を極めた映画という感じなのだ。
な〜んだ結局戦争なの?祈ることなの?テーマはやっぱり環境問題なの?…とつっこみ所は満載ですが、監督・脚本は「タイタニック」や「ターミネーター」のジェームス・キャメロン。さすがに超大作の見ごたえたっぷり。今、自分と同じ時代に生きている人間の想像力のすごさやその特殊映像の進化や可能性に感嘆!1000円で3時間、すごいものを見せてもらったな〜と。
映画を見終えて近くの店で遅い昼食、1050円のサバの塩焼き定食を注文。滑稽なほど想像力のない超現実、しばし白昼夢を見ているような奇妙な感覚に襲われた。

 

 
 
 

寒中お見舞い申し上げます。2010年も静かに始まりました。どんなお正月を過ごされましたか?私は母と妹夫婦と一緒に初めてお正月の温泉旅行に。一泊だけどお正月のおせち料理とか何の準備もしない気楽さを楽しみたく、家族が減って‘あいかわらず’ができなくなったこともあり、今までしたことのないお正月の過ごし方をしようと日光から鬼怒川温泉に。
特急列車で1時間半ほど栃木を過ぎたら景色は急に雪景色。山肌も白く、冬の旅らしい雰囲気満点、空は青くお天気なのに雪が時々きらきら光りながら舞い降りていい感じ。
日光東照宮は久しぶり、小学校の修学旅行とデザイン会社時代の社員旅行で行ったきり。参道はたくさんの屋台が出たり観光客も一杯だけど、なんだか雪のある情景は落ち着いた厳かな雰囲気を醸し出し、とっても静か。少々寒くても甘酒など頂きながら散策を楽しんだ。日が落ちるのも早く、夕方、鬼怒川温泉に着いたころには暗闇の冷凍庫。宿での露天風呂でゆったり足をのばし、舞い降りては解ける雪を見ながら、長湯で英気を養った。
今年はいい年になるといいな……。いい年にしたいな……。
皆さんにとっても良い年になりますように。
今年もどうぞよろしくお願いします。

 

 
 
 

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